アイン・ソフ

アイン・ソフ(エイン・ソフ)とは

アイン・ソフのイメージ

古代ヘブライ語に由来し、ユダヤ教神秘主義思想の一つであるカバラの宇宙観の中に登場するのが、「アイン・ソフ」または「エイン・ソフ」という言葉です。 アインは「無」を、そしてアイン・ソフは「無限」を表すとされます。カバラの世界観では、これを旧約聖書の世界にあてはめて考え、アインは神による世界創造以前の世界であり、まだ何も誕生していない状態を、アイン・ソフは神による世界創造、または世界創造を行う神そのものを指すとします。アイン・ソフは、生命の樹をその源とし、神が世界を創造する要素になるとも考えられています。

アイン・ソフと生命の樹

旧約聖書の創世記の中で、エデンの園の中心に植えられていたとされるのが「生命の樹」です。カバラではセフィロトの樹とも呼ばれ、聖なる樹であるだけでなく、その実を口にすると、神に等しい永遠の命を手に入れることができるとされます。

世界創造そのもの、またはそれを司る神であるアイン・ソフは、10の聖なる段階を経て世界創造を行うとし、その10の要素がセフィロトの樹を象っています。セフィロトの樹の10要素は、知識・慈悲・栄光など、それぞれに神の持つ属性が反映されています。

アイン・ソフの実現

神による世界創造によって、アイン・ソフは完成したように思われがちですが、神による、より良い世界創造は今も続いているという考え方もあります。神が10の要素で作り始めた、または基礎を固めた世界は、今も人間によって創造主である神の意志のもとで変化し続けているというのがその主張です。そして、その創造の行きつくところこそがアイン・ソフだというのです。

アイン・ソフは無限の状態も意味しますが、世界創造におけるアイン・ソフは、神の無償の愛と人間の無意識の強い願望とが結びついて誕生する究極の「無」の世界ともいうことができます。

アイン・ソフを求めることは、神を求めることであり、神の愛を求めることであり、神が示したセフィロトの樹に沿った世界そのもののことであり、その世界を作り出すことでもあります。非常に広く大きな意味を含み持つアイン・ソフは、人間が到達しうるもっとも神に近い世界として、信仰の対象ともなっているのです。